「褒めて伸ばす」ということが基本となっている現代、部下の指導や苦言を呈することに難しさを感じている人は少なくない。
俺もそこそこの立場になってきていたので、部下の育成について悩んだり、どうすれば一人前の思考を持った警察官を育てることが出来るかを考えていた。
正直、「厳しく指導する」ことが全て正しいとは思わない。
正しいとすれば、俺より先輩方がもっと素晴らしい警察官となっているはずだから。
かといって最近のハラスメント対策等により社会がぬるくなっていき、一昔前の状況よりもどんどん悪くなっていってはいないかとも思う。
甘やかしすぎて本当に成長するのかと疑問に思っている人も多いのではないか。
ここでは、「褒めて伸ばす」にも、結果として間違った褒め方があるということをつらつら書いていこうと思う。
コロンビア大学の実験
指導員として任命されてから指導方法について色々と調べていたが、興味深いある実験結果にたどり着いた。
それは、1990年代に行われてたコロンビア大学のミューラーとデュエックによる研究だった。
これは子育てに関するもので、「褒め方」によって子どもたちのチャレンジ心や態度がどのように変化するかがわかるというものだった。
さて、実験結果から面白いことがわかった。
「褒めて育てる」が浸透しているからには、ベタ褒めした子が難しい課題にも果敢に取り組むはずと思いきや、全くそうではなかった。
実験の内容は以下の通り
10歳から12歳までの子どもたち約400人に知能テストを受けてもらい、実際の点数は伏せた上で、「あなたの成績は100点満点中80点だ」と全員に伝える。
そして子どもたちを3つのグループに分け、成績以外に子どもたちに伝えるコメントを次のように伝えた。
- (グループ1)「頭いいね!」とべた褒めする
- (グループ2)「努力の甲斐があったね」と褒める。
- (グループ3)何のコメントもしない。
その後、子どもたちに誰でも解けるようなやさしい問題と、難しい問題のどちらかを選んでもらい、チャレンジしてもらうという実験だった。
実験の予想はグループ1の子供たちは自分の能力に自信を深め、難しい問題にチャレンジするのではと考えた。が、結果は真逆だった(-。-)y-゜゜゜
難しい課題を避ける褒められた子供たち
難しい問題にチャレンジした子供の割合は、
- (グループ1)35%
- (グループ2)90%
- (グループ3)55%
となり、何も言わなかったグループ3の子供たちよりも、グループ1の子供たちの方が、難しい問題にチャレンジすることを回避する傾向にあった。
当時、褒めることが自尊心を高めると信じてきた人々にとっては、衝撃的な結果だったと思う。
さて、グループ1の子供たちはなぜ難しい問題を回避したのか。
「結果として」良い成績を大人たちに確実に見せられる、また「頭いいね!」と褒めてもらえるという状況がやさしい課題を選択させるという圧力として働いていたと考えられるということだった。
しかも、結果をよく見せるために嘘をつき始める・・・
さらに衝撃的なことに、この難しい課題での自分の成績をみんなの前で発表させたところ、「頭いいね!」と褒められたグループ1の子どもの約40%が、本当の自分の成績より良い点数を報告をした。
つまり、グループ1の4割の子どもが自分を良く見せようとしてウソをついたということだ。
(何も言われなかったグループ3では、ウソをついた子どもの割合は約10%だった。)
これは、何を意味するか。
褒められた子どもたちは難しい問題を避けるばかりか、「頭がいい」という自分の評判を落とすことを恐れ、ウソをつくことも厭わなくなったということ。
この実験結果が「褒めて育てる」ことへの警鐘であることは間違いないだろうな。
手放しに褒める手法は成長の機会を奪い、破滅に向かうということ
以上の実験から、こんなことが言える。
- 「頭がいい」と褒められた子どもは、必要な努力をせずにできるはずだと思うようになる。
- 周囲には「頭がいい」と思わせ続けなければならないと思い込む。
- 「頭がいい」という評価を得るため、ウソをつくことに抵抗がなくなる。
社会の中でも捏造、改竄が頻発しているが、優秀な人ほどありがちなことなのかなと思う。
こんな疑問を持ったことはありませんか。
「褒めて育てられているはず若い世代が、もっと自信を持って積極的に困難に挑戦する人が出てきてもよさそうなものなのに、かえって慎重になってないか」
これは会社での部下の育成にも言えると思う。
実験結果はこう締めくくられている。
「その人のもともと持っている性質ではなく、努力の過程を褒めるべき。それが挑戦することを厭わない心を育て、望ましい結果を引き出す」
育成の参考まで・・。
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