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毎晩、隣の部屋から挨拶が来た

引っ越して間もない部屋で、壁越しに隣人から声をかけられる夜が続いた。おかしいのは、挨拶のたびに、俺の記憶から何かが消えていったことだった。 あの部屋に越してから、だいたい三ヶ月後のことだと思う。「だいたい」と言うのは、正確な時期を俺が覚え...
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毎朝、隣の部屋の電気がついていた

築古のアパートに引っ越した夜から、使っていないはずの隣室に明かりが灯り続けた。管理人は「あの部屋は長いこと空き部屋だ」と言ったのに、ドアの隙間からは、確かに人の気配がした。 その部屋に越してきたのは、三月の終わりだった。 仕事の都合で急...
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毎晩、母が同じ話をした

実家に帰省するたび、母は毎晩まったく同じ話を、まったく同じ順番で語り始めた。最初は老いのせいだと思っていた――話の中身が、少しずつ変わり始めるまでは。 母が同じ話を繰り返すようになったのは、三年ほど前のことだ。 最初に気づいたのは、秋の...
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毎朝、冷蔵庫の中が増えていた話

一人暮らしの部屋で、毎朝、頼んだ覚えのない食べ物が冷蔵庫に増えていた。誰かが入ってくる形跡はなく、鍵は常に閉まっていた。 一人暮らしを始めてから三年になる。 県境に近い小さな町に、築三十年ほどの2DKのマンションを借りた。家賃が相場より...
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毎朝、ポストに誰かの名前があった

引っ越して間もない一軒家で、毎朝ポストに届く郵便物には、家族の誰でもない名前が書かれていた。その名前を調べるたびに、私の記憶から何かが少しずつ消えていった。 あの家に越してきたのは、夫の転勤が決まった三月の終わりだった。 県境に近い小さ...
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毎晩、誰かが窓の外を数えていた部屋の話

引っ越して三週間目から、窓の外で何かを数える声がするようになった。最初は空耳だと思っていたのに、気がつけばその声は部屋の中に入り込んでいた。 俺がその部屋に越してきたのは、ちょうど秋が深くなり始めた頃だった。 仕事の都合で県境の町に異動...
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毎朝、台所の椅子が知らない向きを向いていた

引っ越して三週間、毎朝起きるたびに台所の椅子が一脚だけ、窓のほうを向いていた。誰も動かしていないのに、いつも同じ椅子が、同じ角度で。 去年の秋に、ひとりで引っ越しをした。 仕事の都合で県境の町に移ることになって、急いで決めた物件だった。...
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毎朝、庭木に結ばれていた話

引っ越し先の庭にあった一本の木に、ある朝から紐が結ばれていた。最初は一本だったそれが、気づくたびに形を変え、やがて語り手は「誰かが何かを数えている」のではなく、「何かが自分を数えている」ことに気づく。 引っ越しをしたのは、三十二歳の秋のこ...
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毎晩、誰かが庭を数えていた

引っ越し先の古い一軒家で、庭の木の本数がひとつずつ減っていくことに気づいた女性の記録。誰も切っていないのに、確かに減っていた。 あの家に引っ越してきたのは、三年前の秋のことだ。 県境に近い、人口の少ない静かな町だった。バス停からも駅から...
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毎晩、日記の続きが書かれていた

一人暮らしのはずなのに、自分では書いていない日記の続きが毎晩増えていた。筆跡は私のものとまったく同じだった。 日記をつけ始めたのは、その町に引っ越してきた春のことだった。 もともと几帳面な性格ではないし、三日坊主には自信がある。それでも...
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