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祖母がいつも挨拶していた、あの角のこと

祖母は毎朝、玄関脇の何もない壁の角に向かって「おはようございます」と頭を下げていた。幼い頃から当たり前に見ていたその光景の意味を、私が知ったのは祖母が逝って半年後のことだった。 祖母の家は、山間の小さな町の外れにあった。県境に近い、もう名...
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祖父母の家の、開かずの間のこと

祖父母の家には、子どもの頃から絶対に開けてはいけない部屋があった。理由を聞いても誰も答えてくれなかったその部屋の扉が、祖父の葬儀の夜、少しだけ開いていた。 祖父母の家には、子どもの頃からずっと開かずの間があった。 場所は、山のほうへ向か...
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毎晩、知らない声に名前を呼ばれる話

毎晩同じ夢を見るようになった。暗い場所で、知らない誰かが自分の名前を呼ぶだけの夢。ある日、その声が夢の外まで追いかけてきた。 最初に夢を見たのは、去年の秋口だったと思う。 その頃わたしは、職場の異動があったり、一人暮らしをはじめて間もな...
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実家に帰るたびに増えていた家具の話

年に数回、実家に帰るたびに見覚えのない家具が一つずつ増えている。母親は「前からあった」と言い張るが、どこか目が笑っていない。 最初に気づいたのは、去年の正月に帰省したときのことだ。 俺は今、実家から電車で二時間ほどの距離にあるアパートで...
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給湯室の水が、誰もいない時間に流れる

誰もいないはずの時間に、職場の給湯室から水の流れる音がする。最初は気のせいだと思っていた。でも、記録を取りはじめてから、少しずつ、おかしなことに気がついていった。 これは、去年の秋から冬にかけての話だ。 私はその頃、とある中規模の会社に...
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通勤路の途中にある、あの店のこと

毎朝同じ道を歩くたびに目に入る古い雑貨店。だが、同僚も地図アプリも、その場所には何もないと言う。自分だけが見えているものが、だんだんと自分の側へ近づいてきているような気がした。 その店に最初に気づいたのは、去年の春のことだった。 転職し...
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配達物の宛名が変わっていた話

ある日届いた荷物の宛名に、見知らぬ名前が印字されていた。それは最初、単純な誤配だと思っていた。 最初に気づいたのは、去年の秋ごろのことだ。 ちょうど仕事が立て込んでいた時期で、ネットで頼んだ日用品が届くのをぼんやりと待っていた。インター...
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祖母の仏壇に増えていく写真のこと

祖母の家の仏壇に飾られた遺影が、帰省のたびに少しずつ増えていた。知らない顔ばかりのはずなのに、最後の一枚だけは、どうしても見覚えがあった。
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うちの猫が見ていたもの

一人暮らしを始めて半年、飼い猫のムギがある日から部屋の同じ場所を凝視するようになった。最初は「猫あるある」だと笑っていたのに、気づいたころには笑えなくなっていた。 猫を飼ったことがある人ならわかると思うけど、猫って突然、何もない壁とか空間...
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あの留守電に入っていた、別の声のこと

友人・カワムラから届いた留守電に、彼ではない声が混じっていた。最初は雑音だと思っていた。でも聴き返すたびに、その声は少しずつ、内容を変えていた。 これを書こうと決めたのは、先月、カワムラから荷物が届いたからだ。段ボール箱のなかに入っていた...
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