1 罪刑法定主義
刑法を学ぶ上での基礎中の基礎として
- 罪刑法定主義
というものがあります。
これの意味は、
- 行為が犯罪となり刑罰が与えられるには、全て法律で決まっている必要がある。
ということです。
つまり、法律が無ければ犯罪は存在しないということです。
当たり前のことですよね。
何故、わざわざ「罪刑法定主義」なんて言葉として記載する必要があるのか。
それは、その時々の国家、君主が「はい、お前気に入らんから死刑」なんてことを独裁的に判決することを抑止するためです。
現在も世界には独裁国家がちらほら存在します(どことは言いませんが)。これらは国民に対して、独裁者が全てを判決し、極刑にする権限を有しています。
日本は、総理大臣が変わっても、総理大臣の判断で極刑に処すような真似は出来ませんよね。
それは何故かというとこの「罪刑法定主義」という刑法における大原則があるからなのです。
日本においては当たり前といえば当たり前の感覚ですが、世界や過去の歴史から見ると、記載する必要性があるということが分かりますね。
2 犯罪が成立するには
ある「行為」が「犯罪成立」とするには、3つクリアしなければならない壁が存在します。
それは、
- 構成要件該当性
- 違法性
- 有責性
です。
言葉は難しいかもしれませんが、それぞれ意味は簡単です。
構成要件該当性とは、「刑法で犯罪として定められている行為に該当するか」です。
前葉の内容の通り、罪刑法定主義に則り、行為が法律により犯罪に該当することが規定されていなければ、そもそも犯罪ではないということです。
違法性とは、そのまま「行為に違法性があるか」です。
全項目の構成要件に該当していれば、違法性があると一定の推定を受けます。
ただし、違法性の推定を打ち消す事情がある場合があります。これを「違法性阻却事由」と言います。(詳細は「第三章 違法性阻却事由」参照)
よく見る例では、ボクシングの選手が試合で人を殴る行為は「正当行為」であると言えるので、暴行、傷害罪には該当しない、ということ等です。
違法性阻却事由は、ボクシングのような正当業務行為(刑法35条)、正当防衛(刑法36条)、緊急避難(刑法37条)に規定されています。
つまり、犯罪が成立するには、違法性阻却事由に該当しないということが必要なのです。
有責性とは、「行為者に責任能力があるか」です。
行為者が心神喪失状態であれば、責任能力が認められず、有責性が認められないということです。(詳細は「第五章 責任能力」参照)
つまり犯罪の成立には「構成要件該当性」「違法性」「有責性」の3つをクリアして、初めて成立と言えるのです。
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