心霊

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毎朝、台所の椅子が知らない向きを向いていた

引っ越して三週間、毎朝起きるたびに台所の椅子が一脚だけ、窓のほうを向いていた。誰も動かしていないのに、いつも同じ椅子が、同じ角度で。 去年の秋に、ひとりで引っ越しをした。 仕事の都合で県境の町に移ることになって、急いで決めた物件だった。...
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毎朝、写真の中の家族が増えていた

引っ越し先の古い家で見つけた一枚の家族写真。最初は三人だったはずなのに、ある朝から、少しずつ人数が増えていた。何かが、この家に住みついている。 あの家を出てから、もう半年が経つ。 引っ越し先のアパートはこじんまりとしているけれど、明るく...
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毎朝、玄関に置かれていた靴の話

引っ越し初日から、玄関に知らない靴が増えていた。誰も入った形跡はなく、ドアには鍵がかかっているのに。 あの部屋に引っ越してきたのは、二十六歳の秋のことだった。 仕事の都合で急きょ住む場所を探す必要が出て、条件も予算もあまり選べなかった。...
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休憩室の、誰も使わない机の話

職場の休憩室に、誰のものでもない机があった。誰も使わず、誰も片付けず、誰も気にしない——それがずっと、おかしかった。 転職して最初に気になったのは、休憩室の机だった。 今から三年ほど前の話になる。私はそれまで勤めていた会社を辞めて、県境...
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うちの猫が、あの角を見ていた話

引っ越して間もない頃から、飼い猫のムギが毎晩、部屋の同じ角をじっと見つめるようになった。最初は動物の習性だと思っていた。でも、ある日の夜、私はムギの視線の先に、ほんのわずかな変化を見つけてしまった。 ムギがあの角を見るようになったのは、引...
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毎回、同じ角で道を聞かれる

同じ場所で、同じ顔の人間に、何度も道を聞かれる。ただそれだけのことが、じわじわと日常を侵食していった記録。 最初に声をかけられたのは、去年の春のことだった。 仕事を終えて最寄り駅から歩いて帰る途中、商店街を抜けた先にある丁字路の角で、一...
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祖母の仏壇に増えていく写真のこと

祖母の家の仏壇に飾られた遺影が、帰省のたびに少しずつ増えていた。知らない顔ばかりのはずなのに、最後の一枚だけは、どうしても見覚えがあった。
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うちの猫が見ていたもの

一人暮らしを始めて半年、飼い猫のムギがある日から部屋の同じ場所を凝視するようになった。最初は「猫あるある」だと笑っていたのに、気づいたころには笑えなくなっていた。 猫を飼ったことがある人ならわかると思うけど、猫って突然、何もない壁とか空間...
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拾ったノートに書かれていた夢の話

古本屋の近くで拾ったボロボロのノート。そこには、私が見てきた夢と、まったく同じ夢が、見知らぬ誰かの筆跡で記されていた。 それを拾ったのは、去年の秋の終わりごろだった。 場所は、私が住んでいる町の外れにある商店街。シャッターの降りた店が多...
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叔父の家の時計について

亡くなった叔父の家を片づけていた私は、家中の時計がすべて正確な時刻より数分だけ進んでいることに気づいた。それは叔父の癖だと聞かされたが、調べるうちに、その「数分」には別の意味があったように思えてならない。 叔父が死んだのは、私が三十二歳の...
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